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講演3:「日本のベンチャービジネス活発化への提言」(ベンチャー企業の日米比較)
○(株)富士電機(株)特別顧問 四日市大学 総合政策学部 教授 国保元愷氏
昭和31年に富士電機に入り、川崎で重電機の設計をしていた。平成9年に非常勤になるまで全体の研究開発の統括をしていた。その間、会社のリソースだけではだめだと思い、使えそうな技術の導入を海外からしてきた。提携交渉などをしてきた。そうした人たちとは今でもつきあっているが、経験を通してアメリカとどう違うか、どうしたらよいかを提言したい。
★コーポレートベンチャーリング★
数字で表したいのでレジュメを配った。第1章コーポレートベンチャーリングとある。1982年には大企業の革新技術としてイノベーションの件数が639件ある。中小企業は672件で全体では1311件である。主役が移っている。もうひとつ意味がありアメリカの経常収支が赤字になっている。また、イノベーションの中心心が中小企業に移ったのが時期をおなじにしている。アメリカでは軍資金が入って半導体ベンチャーブームがはじまったが、株主重視なので基礎研究から遠ざかっている。資金調達や創業についての環境整備も行われている。この時期、日本からもシリコンバレーやルート128等に企業が進出している。
★日米中小企業と企業環境の比較★
日米の創業環境の比較がある。企業数でアメリカの約2000万社は日本の5100社の4倍である。但し大企業の数は日本の方が多い。日本は約3万社でアメリカの1万4000社の2倍である。アメリカは大企業の数は半分だが従業者は多い。アメリカの大企業に就業する人の数は4000万人で日本は1200万人である。目立つのは個人企業だ。アメリカは1500万社が個人企業で日本の4.5倍ある。個人企業主は900万人いる。昼間は企業で働いているが、夜は自分の会社で働いている。これは税務統計からの数字だ。その50%は25歳から44歳で、16歳から24歳の若い人が5%いる。これは不況期に増えている。どんどん独立して増えているということだ。これがそれから後の会社設立の原因になっている。
中小企業数の推移はアメリカでは86年に増加しているが、日本は微増で91年からは下がっている。今も恐らく下がっているだろう。企業の推移は創業より廃業が多いことがわかる。
創業の環境がいかにめぐまれているかを見る。アメリカのベンチャーは日本の30倍の資金が流通している。アメリカは12兆円、日本は4100億円である。契約を結んでおき、要求をいうとここから毎月情報が入ってくる。それで通っていた。お金を出す以外にも口も出す。経営、人も出す。専門家がたくさんいるので、ベンチャーに入っている。経営者が入り創業者も追い出されることもある。
アメリカはフォローがよい。日本とはそこが違う。日本では口だされるのをいやがるが、アメリカはいやがらない。その能力がVCにもあるということだ。エンジェルは決してその名前の通り天使ではないが、年間2~3兆円が投資されている。マイクロソフトも投資している。社内で開発するのはアメリカの戦略ではない。
大企業の投資も多くなっている。アメリカは資金的には恵まれている。中小企業で研究開発をしているのは13.6%しかない。1兆8000億円をアメリカの企業は自社負担研究開発費として投じており、SBIRと合わせて2兆20億円がSBIRからもある。
国防研究費は政府負担で企業に入っている。
日本の防衛は中小企業に入っておらず全ては三菱重工業など大手に行っている。アメリカの政府援助は良い制度で、研究計画を出すだけで10万ドルもらえる。F/Sを行うと75万ドルが試作品用資金としてもらえる。ここでVCが出てくる。組み合わせてうまくいっているということだ。日本も導入しているが、あまりよくつかわれていない。日本は貧弱だ。
政府の調達をみると日本は中小企業から文房具などを買っており、アメリカより比率は高い。しかし、大手から買って悪かったらこれも仕方ないといわれる。アメリカには買ってやるという意識があり、創業環境はアメリカが優れている。
★製造業の日米比較★
製造業だけ取り出すと、日本の一人当たりの売り上げは1670万円、アメリカは1520万円であまり違わないが大企業は違う。日本は4590万円でアメリカの2420万円の倍近い。垂直統合ができていないからだ。アメリカは、付加価値額がないので単純にはわからないが、恐らくアメリカは高いだろう。日本の大企業は、アメリカは膨大な赤字を出している。
★アメリカの典型的ベンチャービジネスマン★
これまでつきあってきたアメリカのビジネスマンは3種類あり、1つにWASPがある。マイクロンテクノロジーの創業者であるパーキンソンという兄弟がいるがICのクレイジーだ。彼らはICの事以外は全くわからない。日本の半導体の歩留まりは70%、アメリカは20%であるが、ある日、日本の歩留まりが高い訳を教えてやると言ったら乗り出してきた。翌日訪問するともう一人のパーキンソンが出てきた。彼は双子だったのだ。兄貴はクールな男で弟と相互補完的にうまくいっているのだろう。経営者には補完するクールな人間が必要だ。
もう一人は中国系アメリカ人でモーゼル社のチャンさんだ。チャイニーズのIC企業は多いが2ミクロンを出せるのはいないかと聞いたらチャンさんがきた。チャンさんは司馬遼太郎の項羽と劉邦の劉邦みたいな人で大人(タイジン)だ。行ってみて下の人に会うとわかった。営業は白人だが、良いチームワークだ。それ以外の人はハングリーで本当によく働く。
ウェールズ出身のグディング氏とはいまでもつきあっている。10億円ぐらいお金を持っており宮殿を建てている。ヒットラーが乗ったベンツを持っているが、イギリスでは未だに階級社会なので、ウェールズの出身はバカにされる。この社会はだめだとアメリカに来た人だ。
最初は英国の政治家を使ってケンブリッジに機器を提供する会社を買収し、その会社は成功して売却しそのあとMRI製造の会社を買収し売却。その後、ライカを買収して光学機器メーカーに改造して売却、通信がよいと買ってダイナテックに売却。放送機器製造会社を買収して売却などである。グッヂィングをバッティングと変えろと言っているが、この人の特徴は、タイミングをうまく合わせて買って売っていることだ。
9/11のときに、10億ドル貯まったのでやめるといっていたが、本当に辞めてしまった。この人は全部自分でやっているのが凄い。こういう人は日本ではほとんどの人に嫌われる。そういうのが特徴だ。強い人、能力のある人、そういう人は尊敬される、アメリカでは弱い人は軽蔑される。またアメリカでは英語をしゃべらないと軽蔑される。最初に駄目だと思われると落第だろう。やさしい人、かわいい人は日本では好かれるが、日本ではVBには相容れない。信じることである種宗教だ。自己顕示欲が強くて受け入れられないが、絶対勝つのだとグディングをつくっている。こうしたことは気迫に繋がっている。
新しい会社を買ったときには有能な幹部を引き抜いている。補う人が必要だ。また、よく働き、とにかく働く。奥さんを顧みないのでアル中になり、離婚されている例もある。再婚するのに最も良いのはセクレタリーだ。猛烈に働く。エアーのチケットも取ってくれる。
★日本のベンチャービジネス活性化への提言★
積極的にやるべきであるところはやるべきだがそれに応えられない文明の差がある。日本では能力のある人は大企業に入ってしまう。そういうことがあまり無かった豊かな社会にはハングリー精神がない。戦後ホンダもソニーも出たがこれらは昭和30年前後に創業している。
今、社会が豊かになって、フリーターが多いのは自分に合う仕事がないからといっているが、能力がないのででる訳がない。アメリカ型の産業構造が本当よいかどうか。日本ではあわないだろう。日本では、20兆円の赤字を出しているアメリカの輸入で成り立っている。それが30兆円の貿易黒字を生み出している。アメリカの製造業は20兆円の赤字を出している。アメリカの赤字は去年50兆円であるがこれだと日本は崩壊する。グリーンベレーは特種部隊だが、アメリカの赤字を出した原因だ。ベンチャー企業は大規模設備投資ができないので、どうしても大きく稼ぐには、単一技術で設備投資ができる大企業と共存することだ。VBを考えるときに忘れてはいけない。スピーディーな企業は必要だが、大卒などから捜そうというのは無理だ。富士電機の中でも落ちこぼれはいる。こうした人は会社に出てこないし旅費精算もできない。でもアイディアを出させると良い考えを出す。
とりあえず短期的は企業内ベンチャーを出すべきだ。富士写真フイルムは良い会社だが、もとはドロップアウトだ。SBIRも大企業に出すべきだろう。富士通は富士電機から出たが当時相当いじめられており、ハングリー精神を持っている。デンソーなどもそうだ。よいところは大企業に持って行かれてしまう。戦後10~15年で創業しているが、下請け中小企業は疲弊しているが、活路を求めるべきだ。ふらふらしているフリーターの若者から捜すのは無理な。中小企業から構造転換を促すべきだ。計測器などが良い候補だ。
大事なのは技術資金人材を注入するために大学を使うこと。新たにおこすよりは構造転換だ。既得民益、権益を見直すべきだ。 |
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